菜根譚に学ぶ現代人の心の在り方

デジタル化が進み、SNSの普及により情報が溢れ、慌ただしい日々を送る令和の時代。心の豊かさを見失いがちな現代人にとって、約400年前に書かれた処世訓「菜根譚」の教えは、今なお色褪せることない智慧を与えてくれます。

「淡泊」の心で生きる

「名利に淡泊なれば、心境おのずから高し」という言葉があります。名誉や利益に執着しすぎない心構えを説くこの教えは、SNSでの「いいね」数に一喜一憂したり、他人との比較に苦しんだりする現代人への警鐘とも言えるでしょう。

あるインフルエンサーの方は、フォロワー数が100万人を超えた時期に精神的な危機を経験しました。常に注目を集めなければならないというプレッシャーと、数字に振り回される日々に疲れ果て、SNSを一時休止することを決意。その期間に自分の本当にやりたいことを見つめ直し、現在は自分のペースで情報発信を楽しんでいるそうです。

物質的な豊かさや社会的な評価に囚われすぎず、自分の心の声に耳を傾け、本当に大切なものを見極める。そんな「淡泊」の心があれば、おのずと心は穏やかになり、本質的な幸せが見えてくるはずです。

デジタル時代の「中庸」を考える

「過ぎたるは及ばざるが如し」という教えも、現代社会に強く響きます。スマートフォンやSNSとの付き合い方、仕事とプライベートのバランス、消費活動など、様々な場面で「中庸」の精神が求められています。

ある IT 企業では、従業員のワークライフバランスを重視し、「デジタルデトックスデー」を月に1回設定しています。この日は社内のチャットツールの使用を控え、対面でのコミュニケーションを推奨。また、19時以降のメール送信を原則禁止とすることで、テクノロジーと適度な距離を保つ工夫をしています。結果として従業員の満足度が向上し、創造的な仕事の成果も上がっているとのことです。

便利さと依存の境界線を意識し、テクノロジーと適度な距離を保つことは、現代人の重要な課題と言えるでしょう。過度に情報に振り回されることなく、自分なりの「中庸」を見つけることが大切です。

「忍耐」の価値を再発見する

「受くべからざるを受くれば、受くべきを失う」という言葉は、即時性や利便性を追求する現代社会への警告として読み取ることができます。

あるパン職人は、SNSで話題の「映えるパン」を作ることに没頭していた時期がありました。しかし、見た目を重視するあまり、本来の美味しさが疎かになっていることに気付きます。そこで、基本に立ち返り、じっくりと発酵させる伝統的な製法に専念することを決意。時間はかかりましたが、その努力は実を結び、今では「味」で評価される実力派ベーカリーとして知られるようになりました。

目の前の誘惑や近道に飛びつくのではなく、時には「待つ」ことの価値を知り、耐えることで得られる深い満足感を大切にする。このような忍耐の精神は、持続可能な社会を築く上でも重要な示唆を与えてくれます。

「謙虚」の心で他者と向き合う

「満すれば損じ、謙すれば益す」という教えは、SNS時代における人間関係の在り方にも通じます。自己主張や自己表現が容易になった現代だからこそ、謙虚さを忘れずに他者と向き合うことの大切さを思い起こさせてくれます。

若手起業家の中には、急成長したスタートアップの代表でありながら、週に1回は新入社員と昼食を共にし、率直な意見や提案に耳を傾ける時間を設けている方がいます。「私には若手の感性や新しい視点が必要です」と語るその姿勢は、デジタル時代における「謙虚」の実践と言えるでしょう。

おわりに

菜根譚の教えは、時代を超えて普遍的な価値を持ち続けています。令和の時代に生きる私たちが、この古き良き智慧を現代的に解釈し、実践していくことで、より豊かな人生を送ることができるのではないでしょうか。

テクノロジーの発展がもたらす便利さと、人間本来の在り方のバランスを探りながら、一つ一つの教えと向き合っていきたいものです。